グレーな吐息~せぴあなタメ息③~


類は、固まった。

それから、心臓が一気に爆走する。



こっちって・・・


「君の番。頼んだよ」

声がした。

武藤さんが、類の肩を叩いていた。

類は立ち上がって、

ステージの方へ歩き出す。

催眠術にかかったみたいに、

伸ばされた手の方へ。

ステージに阻まれて、はじめてハッと我に返る。

悟が、しゃがみこんで、類に手を伸ばしている。


ここから、来いと。


類は悟ににっと笑うと、手を取った。


あたし、憧れの人と握手しても、気を失うんじゃなかったっけ。