「至福。って信じる?」 「サキ、当たり前だよ。至福なんて何度でもあるんだよ」 「しあわせ。とても。しあわせ……でした」 「でした?」 「あなたは自分の名前を思い出せますか?」 名前? 会社の名札をお前も見ただろう? 俺の名前……? 記憶だって? 記憶。空虚な 貼り付けたような? 「ほんとうの名前……」 見上げるサキの大きな瞳がガラス玉に見えた。 その、金色の瞳が。