扉のすぐそばのイスに、ある女性が座っていた。 おれの顔を見て、「冬樹」と呟く女性。‥何者だ? 「冬樹‥よね?」 『ええ』 おれに近寄ってきた女性は、いきなり泣き始めた。何も言わずに…ただ泣き続けている。 「ごめんなさい…ごめんなさい」 時々呟きながら、ひたすら頭を下げて泣いていた。 『あの…なにか?』 「あの時はこうするしかなかったの。死んだと偽って…あなたを捨てたこと、後悔していたの‥っ」 ---捨てた? ----偽った? 話が噛み合わない。