「下の名前って自分を呼んでもらえる気がします。すごく嬉しいです。だから皆、これからは下の名前で呼び合うようにしたらどうでしょうか?」

健太くんは全てを言い切って席につきました。

パチパチ。と拍手をしながら先生が話し始めます。

「いやぁ素晴らしい提案だったな。それに自分のした悪いことまで正直に言えたのは素晴らしい。佐藤に、いや健太に皆拍手。」

パチパチパチパチ。響くような拍手が教室を埋め尽くします。

「さて、じゃあ今の健太の意見に賛成か反対か手をあげてもらおうかな。賛成の人?」







堂々と言えたその提案が却下されるはずもありません。

それから健太くんのクラスでは皆が下の名前で呼ぶようになりました。

健太くんは友達から名前を呼ばれる幸せを得て、それから悪戯をすることもありませんでした。

健太くんの背中に芽生えた小さな悪意の芽は消え、同時に一つの綺麗な白い羽が落ちました。

「これが神様の言ってた羽。」

僕はそれを拾い大事にしまいました。