健太くんの提案に先生が笑って頷いています。

でもクラスの皆はいまいち意図を理解できていないようです。

「なぜ下の名前で呼んだら良いと思うのですか?」

日直さんの質問に健太くんは上手く答えられるのでしょうか。

健太くんは、一度だけ俯いてグッと何かを堪えると喋りだしました。

「オレはずっと佐藤、佐藤って呼ばれてきました。クラスの皆は下の名前やアダ名で呼ばれています。」

健太くんの話を皆が真剣に聞いています。

素敵なクラスです。

「今日も誰からも名前を呼んでもらえなくて、なんかイライラして、花壇を掘り返そうとしたんです。」

「……佐藤。」

健太くんは、あの時の悪意を皆にしっかりと伝えました。

「その時に止めてくれた子が、オレを下の名前で呼んでくれたんです。オレは初めて名前を呼んでもらえた。そんな気分になりました。」

すごいよ健太くん。

君は今ほんとうにすごいことをしているんだよ。

「それが嬉しくてオレは花壇にいたずらするのを止めました。だから……」