彼は溜め息をついた…ように見えた。




 そして、そのままこちらへ歩みを進めてくる。




(えっ、近付いてくる!?)




 ぬっと腕が伸び……
 




 思わず肩をすくめ、目を閉じた――




 瞬間、温もりのようなものが首元を包んだ。




(え?)




「あ、マフラー・・・?」




 無言のまま立ち去ろうとする背中に向け




「あの! 悪いですよ、こんな・・・」




 と言ったが、そのまま行ってしまった。















 ――思えば、これが凌哉との初めての出会いだった