「おはようございます。」





艶のある声が俺の体を震わせる。




「おはよう。」





俺の心臓が異常な速さで動いてるのを知らない葛城さんは、隣に並んでエレベーターを待つ。





胸の辺りまである、漆黒のサラサラな髪。





鞄を掴む長い指、ストライプのスーツを着てるからかハッキリとわかるウエストの細さに、短いと言っても過言じゃないスカートからスラリと官能的な足が見える。





「葛城さんっ、おはようございます。」


「おはようございます。」





一見、近寄り難いイメージがある彼女だけどそんな事はなく、仕事以外は常に笑顔を見せている。





それもあるが、第一には彼女の趣味なんだと思う。





葛城さんは、車やバイクといった大のメカ好き。





前に一度だけ、地下駐車場で会った時にフェラーリに乗っていた。




男ならまだしも、若い女性がフェラーリなんて驚いた。





それと同時に疑問も浮かぶ。





葛城さんは役職でもなければ、高給取りでもない。





それに、入社してまだ半年ほど。