やがて真奈はふらふらと立ちあがった。


目の焦点が定まっていない。
右手にはバットを握っている。


真奈が家の中に目をやると
玄関に花瓶が置いてある。


長く花を生けていなかった花瓶は
埃に包まれてそこに存在していた。



「これも幻なのね」


真奈は持っていたバットで
花瓶を思い切りたたき壊した。


砕け散る破片。

大きな音をたたて花瓶は
粉々に砕けていく。