……………
頭から水をかぶる。
水飲み場の水は妙に生ぬるかったけど、走り回った後のそれは程好く気持ちよかった。
蛇口を捻って水を止め、濡れた頭を勢いよく上げる。
空には雲一つなくサンサンと光る太陽が容赦なく照りつけていた。
せっかく涼んだ頭も、その光の下ではすぐに蒸気に変えられてしまう。
汗だか水だかわからなくなった水滴を肩にかけたタオルで拭き取り、今度は水を飲み始めた。
…今日で一学期は終わり、明日からは夏休みが待っていた。
とは言っても毎日毎日部活があるので、僕は夏休み特有の気分には浸れないでいる。
どうせ明日もまたこのグラウンドだ。
ふっと時計台に目をやった。
針は丁度5時を示す。
…そろそろ来るかな。
僕は蛇口を捻って水を止めた。
タオルではなく手の甲で口元を拭い、着替えるために部室に行こうとした。
その時だった。
足は部室の方向を向いていたが、視線は別の場所に奪われる。
自転車置き場の奥。
校舎の柱にもたれ掛かる姿。
…息が、止まった気がした。
変わらない瞳で僕を見つめる。
あいつがいた。



