俯いて考えていた。
そんな僕に西が呟いた。
「…ほんと、贅沢だよな。」
僕は思わず顔をあげる。
「『いつか』が必ずくるってわかってても、どうしても溺れていく奴だっているのにさ。」
西の手から煙草の灰がポトッと落ちる。
その顔は、今までみたことのない様な表情だった。
いつも飄々としていて、全てを解っている様な笑顔を崩さない西。
でも今の表情からは、何も読み取れない。
ただ視線が、少し寂しそうだった。
「…どういう意味？」
僕がその質問を口にした時には、その表情はいつものものに戻っていた。
「中川は、もっと自分に自信を持つべきだって意味」
そう言うと、西は煙草を灰皿に潰して僕に煙草を勧めてきた。
僕は一本だけ受け取り、吸わずにポッケに入れる。
「…ありがと」
西の言う意味はやっぱりよくわからなかったけど、僕の背中を押してくれていることはわかった。
「吸わないのかよ」
ふっと笑う西に、僕も軽く微笑んだ。
「背、伸びなくなったら困るしな」
……………
