雪がとけたら




しばらく西は煙草をふかしていた。

何度目かの煙を吹き出した後、口を開く。


「…中川は、贅沢だな」


僕は西に顔を向けた。

「自分が恵まれてるって気付くべきだよ。好きになってもいい相手がいて、お互い同じ気持ちなんて…そうそうないよ?」
「あいつの気持ちなんてわかんねぇよ」
「ほら、気付いてない」

だいぶ短くなった煙草を灰皿に押し付け、西は続ける。


「俺言ったじゃん。中川と戸田さん、恋人同士にしか見えなかったってさ」


新しい煙草を取り出した。
西はかなりのヘビースモーカーらしい。

「案外気付かないもんなんだよ。中川の場合は、近くに戸田さんみたいな人がいるから仕方ないかもしれねぇけどさ。…自分が思うより、他人は自分のこと認めてくれてんだよ。」


西の吹き出す煙を見ながら、僕は西の言葉を噛み締めていた。


『自分が思うより、他人は自分のこと認めてくれてんだよ』


僕は認められるのだろうか。

あいつの隣にいることが、許されるのだろうか。







…やっぱり僕には、わからなかった。