雪がとけたら



怖かった。

その日がくるのが怖かった。

そんなあいつの背中を見るのは耐えられなかった。


だから僕は、自分から選んだ。
自分からあいつに、背を向けたんだ。



…僕の背中を見たあいつが、どれだけ傷付いたかも知らないで。










『雪ちゃん、雪ちゃんの夢は何?』

『夢?』

『あたしは大きくなったら、ケーキ屋さんになるの。雪ちゃんは?』

『俺…何にもなれなくていい』

『どうして?』

『父さんがいて、母さんがいて、俺がいて…。そんな家族があったらいいや。』

『…じゃあ、あたしもそれでいい。』

『え?』

『雪ちゃんがいて、あたしがいて、雪ちゃんとあたしの子どもがいて。それでいい。ううん、それがいい。』

『俺…一人っ子だから、子どもは沢山欲しいな。』

『うん。いっぱいの家族がいいね。』

『約束な』

『うん。約束』










…どうして僕は、あの頃のままでいられないのだろう。


残酷な程、純粋で無垢なまま。
未来の約束を、何の疑いもなく信じれる心のまま。










……………