重い空気を押し退けて、あいつの声が届く。
「…雪ちゃん…変わっちゃったね」
僕はあいつの顔を見る勇気が無くて、背を向けたまま呟く。
「だからそう呼ぶなって」
何かを振り切る様に、僕は歩き出した。
「変わったのは、お前だろ」
僕の呟きがあいつに届いていたかは、確かめる術もなかった。
…部屋に戻り、無造作に鞄を投げ捨てる。
同時に自分もベッドに放り投げ、そのまましばらく動けなかった。
…あいつは何も変わっちゃいない。
あの頃のまま、変わらない原石のままだ。
だからこそ、僕は怖かった。
いつか気付くんじゃないだろうか。
自分がとても魅力的な原石だってことを。
それは周知の事実だってことを。
それに気付いたあいつはどうするだろう。
矛盾だらけの醜い僕の側にいたいと思うだろうか。
西やあの先輩みたいな、自分に見合う相手を選ぶんじゃないだろうか。
そして僕の側から、離れて行くんじゃないだろうか。
…父さんと、母さんみたいに。



