僕はベッドに目をやった。
返事がないことから予想していたが、あいつはベッドの上ですやすやと寝息をたてていた。
高い身長をくの字に曲げて、手のひらを顔の前で軽く握っている。
あいつは寝るとき、いつもこの姿勢だ。
僕はどうしたものかと考えたが、とりあえずあいつの肩を揺すった。
「おい、悟子」
…その肩に触れた時の衝撃は、今でもはっきり覚えている。
春物の薄いカットソーから感じるあいつの肌は、予想以上に温かく、予想以上に柔らかかった。
僕より背が高いくせに、その肩は僕より細い。
…女の子の、肩だった。
「ん…雪ちゃん…?」
はっとして視線を下ろすと、眠そうに目を擦るあいつがいた。
僕は反射的にベッドから離れる。
もそもそと起き上がったあいつは、珍客に驚きながらもゆっくりとした口調で言った。
「…どしたの?珍しいね」
んっと背伸びをして、あいつはベッドから降りる。
あいつと距離を保ちながら、「英語の辞書借りに…」と呟いた。
明日小テストだというのに、辞書は学校のロッカーの中だった。
「あぁ、辞書ね」



