……………
「あら、雪ちゃん!珍しいわねぇ」
マンションのドアを開けたおばさんは、珍客に目を見開いていた。
あいつは目元がおばさん似で、おばさんのくりっとした大きな瞳はまるで少女の様だった。
…昔は。
「あいつ、いる?」
「悟子?いるわよ、部屋」
おばさんは慌てて玄関にかけてあったエプロンをつける。
「夕飯の支度、しなくちゃね」
さも今まで家事をしていたかの様に振る舞っていたが、リビングに広がるアルバムと、意味もなく何度も冷蔵庫を開け閉めするおばさんの姿が、そうではないことを物語っていた。
「あいつの部屋、行くね」
僕はおばさんの背中に向かって呟いた。
「えぇ…ゆっくりしてってね」
冷蔵庫のドアをパタンと閉めて、おばさんは精一杯の笑顔を向けた。
…母さんが死んでから、おばさんはまるで脱け殻だった。
食事もとらず、何も話せず、たまに起きたかと思うと母さんの名前を呼んで泣き始める。
それほど二人は、仲がよかった。
今では普通に生活している様だけど、やはり1日の大半はぼんやりしているらしい。
明るくて少女の様だったおばさんは、すっかり窶れてしまっていた。



