「でも恋人じゃないってのには驚いた」
長い足を前につき出して、西は言った。
「端から見たら、中川と戸田さん、恋人同士以外に見えねぇもん」
「…でも違うんだから仕方ねぇだろ」
「あれか、幼なじみってやつか」
「…それも違うけど…」
僕は語尾を濁らせた。
世間一般の『幼なじみ』。
僕はあいつとの関係を、そこに当てはめたくはなかった。
でもだからといって、他の肩書きが見つかるわけではない。
「ふぅん…なるほどねぇ」
妙に理解したような顔つきをし、西は本に戻った。
こいつのこの何でも見透かしている様な目が、たまにムカつく。
でも大概、西の言うことに間違いはなかった。
…西こと『西裕太』。
こいつとは、中学生になってから知り合った。
同じクラスで出席番号が前後。自然と仲は良くなる。
『西』と『中川』だから西の方が後の席なはずなのに、彼はいつも僕の前に座った。
西曰く、「話す奴の方を自分が向いているという感覚が好き」らしい。
…訳がわからない。
つまり、西は変わった奴だった。



