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「おはよう、『超絶美少女のちっちゃい恋人』さん」
カタンと椅子を引き、西は僕の前に座った。
うつ伏せていた顔を上げ、目を細目ながら呟く。
「…それ、やめろって」
「何で?いいじゃん。あの戸田さんの恋人って言われてるんだぜ?」
「勝手に噂してるだけだろ」
僕は頭をポリッとかいて言った。
西は鞄から本を取りだす。
「だいたい俺は、ちびでもねぇしあいつの恋人でもねぇっつの」
「え?ちびじゃないの?」
真顔で言う西を軽く睨み付け、本を取り上げた。
「あはっ、冗談だって。」
「お前が言うと冗談に聞こえねぇんだよ」
「悪いね、背高くて」
ふんっと鼻をならし、僕は西から取り上げた本をパラパラと捲った。
『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。』
「川端康成かよ」
「知ってんの?」
「それくらい知ってるよ」
「俺の友達、誰も知らねぇよ?」
「その友達が無知なだけだろ」
パタンと分厚い本を閉じ、西に返す。
背表紙に、『川端康成全集』とあった。
…確かに、中学生が進んで読みたがる本じゃないかもしれない。



