あいつはセーラー服を着ていた。
当たり前だ。制服なんだから。
あいつの制服姿は初めて見るのに、その姿には違和感がなかった。
おろしたての新しい制服であるのに変わりはないのに、もう随分前から着ている様な雰囲気。
つまるところ、あいつは凄く、制服が似合っていた。
ランドセルなんかより、はるかに。
「雪ちゃん」
玄関から出てきた僕に気付き、あいつは振り向く。
春休みに切った髪が、肩の上でサラッと揺れた。
「おはよ」
「…うん」
いつもと違う格好で会うのは妙に照れ臭くて、僕は少しうつむき加減に呟いた。
これからこの姿が当たり前になるのに。先が思いやられる。
「あ、ボタン。ちゃんととめないと」
あいつはめざとく、僕の第一ボタンに気付いた。
「しょうがないなぁ」と呟きながら、第一ボタンに手をかける。
あいつのしなやかな指先で、僕の第一ボタンはきちっとボタンホールにはめられた。
「はい。」
ぽんっと僕の肩を叩き、満足そうに微笑むあいつ。
速くなった心臓に気付かれない様に、「行くぞ」と呟いて歩き始めた。
「雪ちゃんが遅れたんでしょ」と、あいつの声が背中を追った。



