「忙しそうなの?戸田さん」
西が伺うように聞いてきた。
あいつはここ最近ほとんど学校に来れていない。
「うん…映画決まってから結構大変みたい。まぁ、喜ぶべきことなんだけどな」
なるべく明るくそう言うが、僕の内心はそんなに明るいものじゃなかった。
西にもそれが伝わったのか、「そっか」とだけ呟く。
決してやきもちなんかじゃない。
あいつが人気者になることに対しての不安でもない。
ただ、心配なだけだ。
あいつは昔から頑張りすぎる所がある。
電話ではいつも元気に振る舞っているから、本当に大丈夫なのかどうかがわからないのだ。
一抹の不安を抱えたまま、桜は次第に散っていった。
…やがて景色は緑色に変わり、僕達の制服も涼しいものになっていった。
ようやくじめじめした梅雨から解放されて、忙しなく蝉が鳴く夏の始まりに、僕の予感は的中することになる。
…あいつが倒れたと聞いたのは、丁度夏休みが始まったところだった。
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