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チロの死は、僕等が最初に経験した別れだった。
僕は、『死』ということをぼんやりとしかわかってなかった。
でもチロが死んで、初めて『死』の意味を実感した。
死は、別れだった。
チロが死んで、僕等はもう二度とチロと散歩に行くことが出来なくなった。
管理人さんに、二人と一匹分おやつをもらうこともなくなった。
…僕等はチロと、永遠に別れてしまったのだ。
「大丈夫、チロは一足先に天国に行っただけよ」
「天国?」
落ち込んでいる僕等に、あいつのおばさんが言った。
「そうよ。チロは一生懸命生きて、私達より先に天国に行ったの。」
「俺たちも行けるの?」
「チロみたいに、おじいちゃんおばあちゃんになるまで一生懸命生きたら、自然と行けるわよ」
僕等の頭を撫でながら、おばさんは言った。
チロは天国に行った。
一生懸命生きて、生き抜いて。
「『寿命を全う』したら、行けるのね」
あいつはおばさんに聞く。
おばさんは微笑んで言った。
「そうよ。だからあなたたちも、一生懸命生きないとね。次にチロに会った時に、チロに恥ずかしくないように」



