足音は廊下の端に消えていき、最後は階段を登る音が微かに聞こえるだけだった。
それを確認すると、僕はくるりと後ろを向く。
「…行った?」
圧し殺した声で一久が呟く。
コクッと頷くと、二人でニヤリと笑う。
「行くか」
緊張で汗ばんだ手をズボンで拭い、ハンガーに掛けてあるジャケットに手を伸ばした。
最大限の注意を払ってドアを開ける。
古いそれはキィッと嫌な音をたてたが、人に気付かれる程ではない。
暗闇に目を凝らして廊下を見ると、先に出ていた西が軽く手招きをするのがわかった。
一久と頷き合い、忍者の様に足音を忍ばせて廊下を走る。
西が廊下に出してくれたそれぞれの荷物を持ち、闇の中に溶ける様に先を急いだ。
…闇を抜け月の下に出た瞬間、三人は息を止めていたわけでもないのに思い切り息を吐き出す。
それが可笑しくて、僕達はなるべく声を殺して笑った。



