「お前の気がすむまでさ、その恋貫き通せよ。大丈夫だよ、西モテるから。案外三年後とかは、めっちゃ美人に告白されてあっさり恋に落ちてるかもしれないし?それまでは…お前の今の想い、捨ててやるなよな」
西の恋がそんな簡単なものじゃないことくらいわかってた。
三年やそこらで消える様な想いじゃないだろう。
でも西は、僕の言葉に軽く笑って顔を上げた。
「…そうだな」
…西の頬に夕日が映る。
その横顔は、あの日見た朱音さんとやっぱり似ていた。
似ているからこそ、切なくて胸が締め付けられる。
朱音さんの微笑みはきっと、西の微笑みと同じなんだろう。
…この、どこか寂しそうな微笑み。
「…そんな事言うの、中川だけだろうな」
ゆっくりと地面が近くなる。
夕日の中の旅が終わろうとしていた。
一周して同じ場所に戻ってきただけなのに、何かが少し変わった気がする。
「…ありがとう、中川」
ゴンドラが開く直前に、西が呟いた。
降りる西の背中に、「どういたしまして」と呟く。



