雪がとけたら




…西の恋は、決して許されるものではなかった。

想い続ければどうにかなるものでもなかった。

でも僕が言うべきなのは、そんなことなのだろうか。

そんな当たり前に、わかりきったことなのだろうか。





「…西」



微かに目を腫らした西が視線を上げる。
僕が西に言うべきこと。




「…好きでいろよ、朱音さんのこと」




…ありふれた常識なんかじゃなく、親友として西に伝えたいこと。


「いいじゃん、終わらせなくても。とことん好きでいろよ。言ったじゃん、西。まだ七年もあるんだろ?今すぐ終わりにしなくてもいいよ」


許される恋じゃない。
祝福される恋でもない。
でも…





「人が人を好きになることが、罪なわけあるもんか」







…子どもの考えだってわかってた。

現実はそんな生ぬるいものじゃなかった。

でも僕達は、まだ16歳だ。


子どもでいて、何が悪い。


…がむしゃらに人を好きになって、何が悪い。