雪がとけたら




「…西」


少し前屈みになって声をかける。

目の前の西は視線だけ夕日に向けていた。




「話してよ、朱音さんのこと」



西の視線は、外に向けられたままだ。

僕は続ける。



「気付いてないかもしれねぇけどさ…お前たまに、すげぇ寂しそうな顔するんだよ。俺ずっと、その理由がわからなかった。でも…それじゃ嫌なんだよ」


くっと手のひらを握る。


「西に俺、色々助けられてきた。俺は…西に何もできないのかよ?どうにもできなくても、何も変わらなくても、俺、捌け口くらいにならなれるから。どんなお前でも俺…幻滅するなんて、絶対ないから」



少しずつゴンドラの中が赤く染まっていく。


近くなる空を眺めていた西は、ふいにくっと笑った。

笑いながらようやく前を向く。



「中川…それ、告白みたいだよ」


軽く口元を押さえて笑う西に、僕は「ちゃかすなよ」と蹴りを入れた。

「ごめんごめん」と言いながら、西はふうっと息をつく。



狭い空間には、観覧車が少しずつ進む音だけが響いていた。