雪がとけたら



ズズッと残りのシェイクを吸い、空になった紙コップをゴミ箱に投げる。

ぐっと背中を伸ばし、反動で立ち上がった。


「っしゃ、行くか!」


突然の一言に、西が眉を上げて言った。


「何、帰んの?」


僕は西の空になった紙コップを取り上げて言う。


「何言ってんだよ。メインにまだ乗ってねぇだろ?」


ニヤリと笑って、紙コップをゴミ箱に投げた。
ガシャンと音をたてて綺麗に吸い込まれる。


夕日の中でゆっくりと回るそれを指差す僕。


少し驚いた表情を見せたが、軽く苦笑して西は言った。





「そりゃそうだ。今日のメインイベントだもんな」













…ゆっくりと夕日を横切る。

ゴンドラは、でかい男が二人も入るとなかなか狭かった。

「メリーゴーランドの次に不審な目で見られたな」
「そりゃそうだろ。観覧車なんて、カップルでイチャイチャするために存在してる様なもんだからな」

くくっと笑いながら「中川とイチャイチャか」と呟く西に、僕はありえねぇだろと軽く蹴りを入れる。

ゴンドラは軽く揺れ、それがおさまった頃には静かな空間になっていた。