雪がとけたら




……………


次の日西は、あまりにもいつも通りだった。


いつもと変わらない笑顔で「おはよ」と言い、読みかけの本をパラリと捲る。

あまりにも普通で、僕は逆に戸惑った。


僕からは、あの話題は出せなかった。
でも西から話してくることもなかった。

その曖昧な時間が妙に居心地が悪い。


…ただ、あの日から何も変わってないわけじゃなかった。



まず、ナァが部屋に来なくなった。

僕と一久は大抵一人部屋の西の部屋に入りたびっていて、ナァも気付いたらそこに交ざるようになっていた。

でもあの日から、ナァは一度も部屋に来ていない。

僕の見る限りでは、西と話してすらなかった。



そして、もう一つ。



…西が、煙草を吸わなくなった。


西の部屋からは、煙草の臭いが消えて、同時にあのアメリカンチックな灰皿も、目につくことはなくなった。

僕はそれが、気になって仕方なかった。