雪がとけたら




……………


それはあまりにもあっさりと解ってしまった。


梅雨もあけ、テストの結果からも立ち直り、さぁ夏休みだという終業式の日。

クーラーのない教室ではパタパタと下敷きの音が響き、なんだかそれが無駄に暑さを呼び集めている様な気分になる。

それでも扇がずにはいられずに、僕も皆に倣いパタパタと風を作っていた。


隣の席は空席。


ホームルームが終わってから、あいつは席に戻っていなかった。

…まぁ座っていても、何を話すわけでもないのだけれど。



そんなことを思いながら僕はパタンと机に伏せた。

…木の机から、夏の香りがする。




「中川!」




教室の入り口から、僕を呼ぶ声がした。

僕のことを『雪』ではなく『中川』と呼ぶ奴は限られている。


ばっと顔を上げると、思った通り西が入り口にいた。


そこを見るなり、眉間にしわがよる。

不快だったからではなく、見慣れない光景に驚いたからで。



西の隣には、見覚えのない小柄な女の子がいた。

幼い顔には似合わない神妙な表情をしていて、ペコッと頭を下げる拍子に、ゆるく2つに結んだウェーブのかかった髪がさらっと揺れた。