雪がとけたら




……………

「わ!お前どうしたんだよ!」

びしょ濡れのまま部屋に駆け込んだ僕に、一久と西は驚いた表情を見せた。

ナァはさすがにもう帰ったようだ。

「ちょ、そこ動くな!ったく、傘どうしたんだよ」

バタバタとタンスの中からバスタオルを取り出して、僕に向かって投げる一久。

受け取ったまま拭こうともしない僕に、西は「何かあった?」と聞く。

異様な雰囲気に、ゆっくりとタンスを閉めながら一久も眉間にしわを寄せた。


「や…別に、何もないよ」

そう言いながらも、僕の脳裏にはさっきのあいつがさまざまと蘇ってくる。



…わかっちゃいけない気がした。

あいつが今何を抱えているのか、
あの場所で何をしていたのか、
僕は本能的に知ってはいけない気がしていた。


でもどこかで、本能に逆らいたい自分も認めていた。





…僕はあいつに、何もしてやれないのだろうか。








……………