雪がとけたら



コントの様な二人のやりとりを可笑しそうに聞いている西に、僕は振り向いて言った。

「ヤバ、やっぱ忘れたっぽい」

手のひらに乗せていた顎を上げて「まじ?」と呟く西。

同時に漫才を繰り広げていた二人も僕に視線をやった。


「何?なんか忘れもん?」
「あぁ、英語の宿題忘れた」

腰に手をあてて片手で頭をぽりっとかく僕に、一久は「見せてやろうか」と聞く。

でも宿題はプリントで、提出しなければ意味はない。
あの先生はテストより課題を重視するから、一回の課題はなかなか無視することはできなかった。

「や、いいや。ちょっと取りに行ってくる」

僕は諦めて学校に戻る道を選んだ。

幸い寮は学校のすぐそばだし、まだ夕方だから学校も開いている。


「大丈夫かよ?」
「大丈夫だろ、まだ直撃してねぇし」

ちらっとカーテンを捲って外を見て、雨がまだそんなに強くないことを確認した。


「じゃ、ちょっと行ってくるわ」
「飛ばされない様に気をつけてね!」


心配そうに言うナァに、「お前も早く寮に戻れよ」と言い残して部屋を出た。


バタンと閉めたドアの向こうで、再び二人のコントが始まったのがわかった。