頭を両手で抱え込むあいつ。
戸惑う僕は「おい…」と手を伸ばしたが、その手もあっさりと振り払われた。
「…ほっといて。もうあたしに、かまわないでよ」
震える声で小さく呟き、覚束ない足取りで教室を出て行く悟子。
行き場のない振り払われた手を仕方なく下ろし、僕はそのまま吸い込まれる様に席についた。
「…なんなんだよ」
僕は左手で頭を抱えた。
さっきのあいつの瞳。
冷たいのでも、悲しいのでもなかった。
…それは、怯えたものだった。
「…何があったんだよ、悟子」
吐き出す様に呟く。
でもそれは、あいつに届くことはない。
ゆっくりと視線を横にずらし、さっきまであいつが座っていた席を見つめた。
あいつの残像を、沈みかけた太陽が奪っていった。
……………



