雪がとけたら



逡巡しながらも席に近付く僕に、あいつは薄いノートを差し出した。

見覚えのないそれに益々戸惑う。

「え、何…」
「男子用の日誌」

あいつは僕の机にパサッとそれを置き、「明日日直だって」と呟いた。

「あぁ、日直…」と繰り返してそれを受けとる僕の横で、あいつはガタンと立ち上がった。


文庫を無造作に鞄に詰め、乱暴に椅子を引く。


そのまま教室を出ていこうとするあいつを、僕は思わず引き留めた。


「おい、悟子…」
「さわんないでっ!」


とっさに腕を掴んでしまった僕の手を、あいつは思い切り振り払った。


パシンと乾いた音が夕日の中で浮かぶ。



「…気安く呼ばないでって、言ったでしょ」



僕に掴まれた腕を押さえながら、あいつは吐き捨てる様に呟いた。

衝撃を受けながらも、僕は聞かずにはいられない。


「…なんなわけ、お前。何怒ってんの?」
「別に怒ってなんかない」
「じゃー何、その態度。俺が連絡しなくなったの怒ってんの?でもそれだって、元はと言えばお前から…」



「やめてっ!!」



…突然の大声に、僕の心臓は跳び跳ねた。