「――んじゃ、みんな気を付けて帰るよーに。明日は遅刻すんなよ」
いつものようにそう言って、ショウちゃんは教室を出て行った。
クラスメイト達は各々に鞄をもって帰って行く。
あたしはその様子をただボーっと眺めていた。
響が学校に来なくなって、3日。
もう、明日は終業式。
電話しても出ないし……。
いったいどこに行っちゃったの?
空席の響の机を見て、唇をキュッと噛み締めた。
「今日も来なかったね、成田君」
そう言ったのは、のんちゃん。
響の席を見て、それから眉を下げて笑った。
ショウちゃんが言ってた。
家の都合で休んでるって。
終業式には来ると思うけど、まだはっきりわからないって。
なにがあったの?
音楽室であの日、ショウちゃんが言ってた
『時間がない』に関係してる?
あたし……響の事なにも知らなかった……。
黙ったままのあたしに、今度はゆっこがにっこり笑った。
「明日はきっと来るよ!そしたら文句くらい言ってやろ?」
「……ま。とりあえず明日で2年も終わりだし、今からどっかよってこ!」
沙耶もゆっこの言葉にうなずいて、「ね?」とあたしを促した。
2年と3年はクラス替えがないから、みんなそんなに気にしてる様子はない。
春休みが終われば、また同じメンツが揃うんだから。
ね、響もそうでしょ?
4月から、また一緒のクラスで過ごせるんだよね?
沙耶達について、のそのそと立ち上がる。
鞄を肩にかけて教室を出たあたしの目に、ある人が飛び込んできた。
あ……。