記憶 ―砂漠の花―[番外編]



『……ズ…、アズ…』


俺を呼ぶ声がする。


これは、また君か?

君が、
呼んでいるのか…?



「……ずさ…、梓!?」

「―――ッ!?」


俺は瞳を開けた。


「…またぁ、ソファーなんかで寝てないでよ!」

台所から片付けものをしている母親が呆れてそう話していた。


「…あぁ…ごめん、母さん」

ソファーの前では、誰も見ていないテレビが今日のニュースを話していた。



…また、

あの夢だ…。


胸が苦しい。
決まって寂しくなる。

一人では、この感情に支配される。
心にあいた穴を埋めたい。


…俺は、
寂しがりなのかもしれない。


大学へ進み、周りの友達が独り暮らしを始め地元を離れる中、俺は実家を離れられずにいた。



「…こわいわねぇ…」

母がテレビの声に反応してこっちに近づいてくる。


「…何が?」

「ストーカーですって。」

テレビに映るキャスターが淡々と殺人事件を話していた。


「…あぁ…」

ストーカーの若い男が、自分の想いが叶わない事を理由に相手の女性を……

視野が狭い。
自分勝手。

お前は、それで満足なのか?