そして俺らは走り出す

「んーと……」


どうしよう。

本部に連れて行こうと思ったんだけど……



いや、もしかしたら選手の誰かに用事があった、とか?



それはないか。

男子恐怖症で、それはない。




ていうか、待て、この状況。



俺の立場からすれば、なりゆきで迷子の子を助けてあげる的な感じなんだけど。


でも向こうの立場からしたらどうなんだ?


偶然とはいえ男子控え室のところに迷い込んで。
知らない男の人にいきなり腕引っ張られて。

挙句の果てにはいつの間にか医務室で、待ってろと伝えられて迎えに来たのは、腕を引っ張った張本人である俺。


「…………。」


うわー…。


男嫌いどうこう以前に、警戒されんの当然じゃん。


なにやってんだよ、俺。



相手は相変わらず無言で。


よし、と覚悟を決めると俺はくるりと相手に背中を見せる。


後ろを向いてしまったので、その表情は分からないが
多分不思議な顔をしてることだろう。



「何があったのか、俺には分かんねぇけどさ。

とりあえず、本部行こうぜ。
あそこいけば、大抵のことは何とかなるし」



「は、はい…っ」










<div align="center">――初めて会話したその高めの声は。



ちょっと怯えてるようにも聞こえたけど







希望が持てたような







何だか明るい声に








俺は聞こえたんだ。</div>