もう、一日中、
降ってたというのに
まだ降るか・・・


欝陶しい雨だな。

まったく・・・


残業を終えて、
クタクタの身体を引きずり
帰宅。


明日は休みだし、
ゆっくり寝てやる。

そんな思考に脳内を
占領されている。


駅の改札から出て
自宅に向かえば、
今朝の三差路の看板は
目線の随分先にまだあって、
今日が通夜なんだなって
思った。


ーーー?なに?


結構な雨音の中
押し殺したような
声が聞こえる。


・・・何?


通りを曲がりかけてすぐ、
葬儀の看板の横、
私からみれば電柱の影に、
人影を見つけた。



塀にもたれかかり
俯き、肩を震わせ
啜り泣く呼吸の音がする。


ちょっと、ビビりつつも
近づけば、雨の中傘もささず
濡れたスーツの青年がいた。


放置して行くべきだった。


私のヒールの音に
目の前の青年は
俯いていた顔をあげた。



・・・あーーー

キミは・・・・


彼は、ただただ、
涙で緩んだ表情を、隠す事なく、
歪んだ瞳で見つめてくる。


私は、言葉を探したけど
何にも発せられず、
ただ、さしていた傘を
さしだした。



ゆっくりのびて来た指が
震えながらも
傘の柄に絡み付いていった。