うちは、比較的有名な商社で
営業部といっても、
結構な課数に別れている。
その人は、
海外事業部とかかれた
列席の中にいて、
俺の同期の男を囲み、
歓談していた。
凛とした風情
いつも駅で見かけていた
その人が、そこにいる。
『なになに?
あいつ、気になる?』
自分の上司が
視線の先の彼女を捕らえて
含み笑いを浮かべる。
『ダメだよ。彼女は
俺のだから。』
……マジか?
『はあっ?あんた
こっぴどく振られてるじゃん。
何回も懲りずに。
まあ、酷い振られ方よねぇ。』
酎ハイを傾けながら
女性の先輩が突っ込む。
係長の『彼女』ってのは
さすがに、有り得ないと
思ったけど。
だけど
………何で、その可能性を
考えなかったんだろう。
うちの課からみれば
あの人のいる課は
羨望の的だ。
同期を含めても
有名大学卒者で構成されている
いわゆるエリート系集団で
それは、最終学歴だけではなく
業績にたいしても、しかり。
それこそ面接時、
同期のアイツも、
四歳年上だからという理由では
片付けきれないほど、
他の大卒者と違って、
しっかりとした志があった。



