「真っ暗…。」
洞窟の中は当然真っ暗だった。
「大丈夫だよ。」
リムはサッと火をつけドロップに渡す。
彼はいつも準備が良過ぎるぐらいだとドロップは時々思う。
洞窟をそのまま進むと広い場所に出た。
ドロップは壁を見て思わず呟いた。
「壁画だ……。」
誰が描いたのだろう。
天井に小さい光のような丸があり、そこから滴が流れている。
その滴が大きくなって星になっている。
星の中に小さな涙の形が二つあった。
隣の壁にはその涙の形の二つが大きく描かれ、下では人…のようなものが争っていた。
「これは…。」
リムは壁画を睨みながら、誰にも見えないように複雑な顔をする。
フォールは壁画の隅々を見ている。
壁画を見ておいでと言われたドロップはただ壁画を見つめていた。
今は何処にもない、昔話。
ドロップはこの壁画の絵に見覚えがあった。
小さい頃、住んでいた夜〈ブシク〉の村の近くにもこれと同じものがあった。
どんな話なのかはクレスが教えてくれた。
その後見た夢の中でも、この絵は出て来た。
夢の中では城の中の本で見た。
誰が描いたのかは解らないが、かなり古い本だった。
これはスノー・ラヴァ―ズの話だった。
幼い頃はただのお伽話だと思っていた。
だけど、これは現実にも起きた話だった。


