美音はてっきり、
小さい頃に龍生が
拐われかけた事を
言っているのかと思った。
「はい。
…あの、それって
拐われかけた事ですか?」
「えっ、違うわよぉ。
もっと前。」
「え…?」
「まさか、知らなかったの!?
あたしはてっきり、
知ってるとばかり…。」
「あの…
何か隠してる事が
あるんですか?」
「ううん、隠してる
訳じゃないんだけどね。
まだ伝えるには早いからって
時期が来たら教える事に
なってたんだけど…。
どうやら早すぎたみたいね。
今のは忘れて。
あたしも今日は帰るわ。
またね、美音ちゃん。」
紗英は手を振って
帰っていった。
美音は首を
傾げながら中へ入った。