深く、静かな夜だった。

空から零れ落ちそうなほどの、大きな満月が爛々と輝く夜。

その月以外に光はなく、星さえも妖しげな月光に恐れおののき、身を隠しているかのようだった。

闇は地上へと滴り落ち、どこまでも下界を染め上げていく。

そんな闇を湛え、太陽が昇っても干上がる事のなくなった沼の如き、漆黒の森の中にこの屋敷はあった。

誰が名付けたのか。

『非ず者達の館』

この屋敷は誰ともなく、そう呼ばれていた。