数刻後、私は蛮カラ姿のまま、唐傘を差し、とある一軒の邸宅付近を右往左往しておりました。

事務員が教えてくれたその場所には、私の追っている何かが、どうやら待ち受けているのは確かなようでした。

私の態度にすっかり得意になった事務員は、あれまこれまの、饒舌な語りを披露してくれました。

先生、貴方の教え子の一人に、若い娘がいること。

華族出の令嬢であるその娘は、女ながらも学問に秀でており、國芸学校に出入りしては、先生の教えを請うていたこと。

先生が退いた今でも、暇を見つけては学校に出入りしていること。

また、飛び切りの美人ではあるが、男勝りで、ガンと譲らない負けん気を持っていること…。

最後に、その娘の家の大まかな場所を聞いたところで、私は礼を言って、足早にその場を離れたのでした。