先生の邸宅を後にしてから程なく数日後の私は、先生の長らく籍を置いていた、國芸学校へと足を運んでいました。

勿論のこと、先生、貴方の身辺調査のためでございます。

しかしながら、私には、最早、ただ単に調査とは割り切れない何かがありました。

明確にはいきませんが、私の好奇心、探求心は学問という言葉にとって変わり、捜査の名目であちこちに出回る私のどこかに、引っ掛かっていたのは事実でございましょう。

とは言え、当時の私はそのことに気付かぬ振りをしては、「赤」を野放しにしてはおられんと息巻き、凄んでは所構わず外回りに励んでおりました。

ともかく、本心も建て前も定かにならぬまま、私は執拗に先生の消息を追っていたのでした。