当の本人の御自宅をお話しするというのは、どうにも調子が狂い、そして、罪悪感と恥じらいが沸き立ち、今にも逃げ出したいのが本心ではありますが、一思いに洗いざらい白状してしまいたい、私の心根をどうかお許しください。

押し入れの書物達は、その前にある空間とは違い、先客が観念したのか、やたらと荒らされた様子はなく、整然さが少しだけ保たれておりました。

その時、私には単純に、純粋に、目の当たりした山程の書物と、それを所持する山口文殊なる人物に、興味が沸いてきました。

そして、それに加えて、特高である驕りと名目の下、私は、

私は押し入れから書物を二、三、引っ張り出し、手中に納めてしまったのです。

そうして、それを持ったまま邸宅を後にし、家路に着いたのでした。