あの日から私の心は落ち着かない。金平さんの脅しのような笑顔が頭から離れない。

金平さんと正式にお付き合い?

今までみたいに食事にだけに付き合うのとは訳が違う。

さらに向こうに見えるのは"金平さんの妻"になる自分の姿。

私はあんな人を愛せるの?

イヤだ。イヤだ。イヤだ。

でも、お店の為。両親の為に。

私は私は、どうしたらいいの?

圭吾さんに会いたいよ。
私はあなだが好きなの。
好きなのはあなただけなの。

"コンコン"
ドアをノックして部屋に入って来たのは、ココアを持った春子さんだった。

「春子さん…」

私はポロポロと泣き出してしまった。

「まあまあ。こんなに心を痛められて。かわいそうに」

春子さんは私の隣に座り、背中をさすりながら、

「美由紀さん。お父様もお母様も隆さんも、お店よりもあなたの幸せを一番に考えていらっしゃいますよ。

自分の気持ちに素直になりなさい。

好きな人とじゃなければ、幸せになれませんよ。

美由紀さんが無理に笑っても誰も喜びませんよ」

私は春子さんの言葉がうれしくて、抱きついて思いっきり泣いた。

春子さんはずっと背中をさすってくれていたんだ。