ベルトワール帝国との戦の前線にいた第二王子アーレスが、
退却の際、流れ矢に当たって戦死したのだ。

アーレスはロキが亡くなった為、王位継承権を持つ者として、前線から外される予定だった。

「一気に王子を2人も失うとは国民も国の未来に不安を覚えるでしょう」

「早急に王太子を決め国民に発表を…」

口々に飛ぶ大臣の言葉をユリウスは一段高い場所にある王の席に座って黙って聞いていた。

「幸い我が国にはまだクラリス王子にリリス王子がおられます」

「しかしリリス王子はあの調子ですし」

「だが、クラリス王子は母君の身分が低いので即位するのはいかがなものかと…」

話題に上がった王子が射抜くような冷たい瞳で大臣を捉えた。

大臣は息を呑むと言葉を止める。

「確かにノイン…母は宮廷音楽隊の1人でしたが、きちんと側室として王宮に上がり王妃として約20年過ごしています」

抑圧的な低い声がシンとなった議場によく響く。

「この非常事態に必要なのは資格ではなく資質ではないですか?国王陛下」

クラリスの声に合わせて皆が一斉にユリウスへ視線を向けた。