空白の玉座



「助けてください!言う通りにします!だから殺さないで!!」

無我夢中で叫んでいた。

そんなルシアの言葉を予想していたのか男はすんなりと剣を鞘に収めた。

「…少しでかける、大人しくしていろ」

ドアの閉まる音を遠くに聞きながら、崩れ落ちるようにベッドに手をついた。


ガクガクと体の奥から込み上げる震えが止まらない。

「…っ…っく……っ…ぅ……」

とんでもない。
とんでもないこと言ってしまった。

国王を殺すなんて。


震える体を抱き締める。
涙が次々と頬を伝った。

そんなこと、自分にはできない。


ルシアはクラリスの出て行ったドアを見つめた。

素早くドレスを身につけるとドアに耳を寄せる。
男は出て行ったようで気配は感じなかった。