右手に収まったのは小さな小瓶で、多角形に削られた側面は周囲の光をキラキラと反射している。
藍色のガラスを覗くと中に液体の線が見えた。
「これは…」
嗅いだ覚えのある匂いがふと漂ってルシアは口元を手で覆った。
「…ツギの実の匂い…………っ!!」
突き付けられた切っ先にルシアは息を呑んだ。
「…お前、何者だ。ただのガキがなぜこれを知っている」
鈍く光る刃先が首に触れてゴクリと喉を鳴らす。
答えろ、と言葉と共にさらに強く刃先が喉に当たるのを感じて、ルシアは慌てて口を開いた。
「か、狩りで使うんです。…この匂いを狼が嫌うので、お守り代わりに父や兄が狩りに持っていっていたんです」
「………」
「母が果実酒の色によく似ているから間違えないようにと言っていた……猛毒の……」
「…どうした?」
「…まさか……」


