乱れた服を整える男の背中をルシアはぼんやり見ていた。
行為自体慣れてしまえば痛みもさほど感じない。
男が身支度を整え始めたことにホッと息を吐きながら、慣れていく自分を恐ろしくも感じた。
雑念を振り払うように首を振る。
ノックの音がして扉の向こうから声がきこえた。
「クラリス様、お時間です」
条件反射でルシアは皺が寄ったシーツを自分の体に引き寄せた。
「あの男はここまで入ってこない、いい加減覚えろ」
顔を上げると冷たく自分を見下ろすシルバーの瞳と出会う。
「…私は何をするんですか?」
恐る恐る聞くとクラリスは思案するような顔で口を開いた。
「葬儀が終わって十日すれば慣例通り後宮に妃を迎える事ができる。お前を王の妃として後宮に入れる」
「…こ、国王様のですか?!」
あまりの事にうっかり離しそうになったシーツをルシアは持ち直した。
「後宮…」と、呟いて顔を赤らめながら俯いたルシアをクラリスは鼻で笑う。
「寝所で王の相手をしろとは言ってない。王に会うのは一度きりだ。お前がうまくやればな」
首を傾げていると、服を整えたクラリスが立ちあがって何かを自分に向かって投げた。


