慌ててルシアは兄に駆け寄る。
浅い呼吸に途切れる声、震えるルシアの肩を掴む力だけが妙に強かった。
「…逃げ…ろ」
「…いや!お兄ちゃん…やだ…」
弱々しく首を振ると涙が雫となって横たわる兄の体の上に零れる。
「…逃げて、生きろ」
兄の指がルシアの頬を伝う涙を掬った。
そうして自分からルシアを遠ざけるように肩を押す。
「お兄…」
「行け!!!」
悲痛な叫びにはじかれたようにルシアは立ち上がる。
それでも足は動かない。
視界の端には倒れた両親の姿。
「行け!」
もう一度言われてルシアは家を飛び出した。


