「アメリア姫」
呼ばれてアメリアが視線を動かした時にはすでに男は傍まで来ていた。
歩み出て跪くとアメリアの手をとる。
軽く口づけるとアメリアを振り仰いだ。
ライトブラウンの髪がさらっと揺れる。
「相変わらずお美しい。幻の宝石の輝きもあなたの前ではくすんで見えるでしょうね」
いつも通りの賛美の言葉に、アメリアは握られたままの右手を思わず引いてしまいそうになった。
ランスロット伯爵の息子であるガイだけはアメリアを姫と呼ぶ。
王妃とは呼びたくないらしい。
鳥肌の立つような賛辞と、過剰なスキンシップさえ我慢すれば悪い男ではない。
アメリアは軽く膝を折って、笑顔を返した。
段々と席が埋まり、後から宰相のコーアンとクラリスが姿を見せた。


