空白の玉座




「今日、国王陛下の代わりにニースの町の視察に行くの。急だけど準備してもらえる?」

鳥が歌うような声。

出会った頃から少女の雰囲気が抜けないままだ。

「国王陛下はどうされました?」と聞くと、太陽のような笑顔が少し翳った。

「ご体調が優れないみたい」

相次ぐ王子達の死に気落ちしたのか食欲もあまりないという。

ジェイスたちは国王を護るための騎士隊と違って、王妃専属である為、あまり王妃以外は接点がない。

その代わり親衛隊は王妃の命令さえあれば自由に動ける。

その昔、ある国王が溺愛する王妃を戦場にまで連れて行った際、王妃を護るための兵士として配属させたのが始まりだとか。

長い時を経て名前を親衛隊とし、独立した機関となって今に至る。


ニースへは馬車で、小一時間ほどで着く。
ジェイスはゴルドアの指示通り隊列を組むとすぐさま王宮を出発した。